生成AIやAIエージェントの進化を見て、「RPAはいずれ必要なくなるのではないか」と考える方もいるかもしれません。
少なくとも現時点で、私はAIとRPAを置き換えの関係で捉えるべきではないと考えています。
生成AIは、文章やデータの意味を読み取り、分類・要約・分析することを得意とします。一方、RPAは、決められた手順に沿ってシステムを操作し、データを受け渡し、処理を繰り返し実行することを得意とします。
この二つを組み合わせれば、RPAによる定型処理の途中にAIの解釈や分析を加え、その結果を次のシステム操作へつなげられます。さらにAIは、自動化シナリオを作成・保守する担当者の負担も軽減します。
つまり、AI時代にRPAが不要になるのではありません。
むしろ、AIによってRPAの役割は広がり、業務自動化の考え方そのものが次の段階へ進み始めているのではないでしょうか。
2026年8月31日より順次提供を開始した「Autoジョブ名人 Ver.10」には、こうした考え方を具体化する4つのAI機能が搭載されました。本記事では、Autoジョブ名人 Ver.10を一つの例として、AIとRPAの役割分担、そして企業がこれから業務自動化をどう考えるべきかを整理します。
AIとRPAは、得意な仕事が異なる
生成AIとRPAの違いは、「考えるAI」と「動くRPA」と整理すると分かりやすくなります。
ここでいう「考える」とは、AIが人と同じように責任を持って判断するという意味ではありません。AIは入力された情報をもとに、文章を生成したり、内容を分類したり、要約したり、傾向を整理したりします。しかし、その結果が業務上正しいか、どこまで使えるかを確認する責任は人にあります。
一方、RPAは業務システムやWeb画面を操作し、決められた手順を実行することに向いています。人が繰り返し行っている定型的な操作を、決められた流れに沿って処理できます。
AIが内容を解釈・分析し、その結果をRPAが後続処理へつなぐ。この役割分担を前提にすると、「AIかRPAか」ではなく、「AIとRPAをどう組み合わせるか」という問いが重要になります。

RPA活用には、導入前と導入後の二つの壁がある
人手不足や業務の属人化への対策として、RPAが有効であることは広く認識されるようになりました。しかし、企業の方々と話をしていると、RPAをめぐる課題は一つではないと感じます。
一つは、RPAの必要性を感じながらも、導入に踏み切れない企業です。
●動化したい業務を整理できる人がいない
●開発できる開発できる人材がいない
●導入後にきちんと運用できるか不安がある
●エラーが起きたときに対応できる体制が見えない
RPAの効果を理解していないから導入できないのではなく、対象業務の整理、開発、運用への不安が、最初の一歩を重くしているケースがあります。
もう一つは、すでにRPAを導入しているものの、活用を広げられない企業です。例えば、
●自動化シナリオを作れる人が限られている
●エラーが起きると、詳しい人が対応するまで業務が止まる
●一つの業務では使えていても、他部門への水平展開が進まない
●一部の作業だけの自動化にとどまり、業務全体への垂直展開ができない
●長年使ってきた自動化資産を、今後どう維持するかが課題になっている
といった悩みです。
RPAには、「導入したくても導入できない壁」と、「導入した後に定着・運用・展開できない壁」の両方があります。私は、AIが大きく変える可能性があるのは、まさにこの二つの壁ではないかと考えています。

Autoジョブ名人 Ver.10のAI機能は、RPAのライフサイクルを支援する
Autoジョブ名人 Ver.10に搭載された4つのAI機能は、RPAのライフサイクルに沿って見ると理解しやすくなります。
1.シナリオを作る
2.エラーを直す
3.対象業務を広げる
4.既存資産を引き継ぐ
この4つです。
1.作る|AI開発アシスト
Web操作を自動化するシナリオでは、画面上のボタンや入力欄を正しく特定する必要があります。その際に使う「タグ情報」は、画面の各要素を識別するための属性情報です。
従来は、候補となるタグを調べ、処理方法を設定する作業に、一定の知識や経験が求められました。ここが、RPA開発のハードルになることがあります。
AI開発アシストでは、実行したいWeb操作を日本語で指示すると、AIがシナリオとタグ情報の候補を提示します。担当者は提案内容を1行ずつ確認し、必要に応じて編集しながらシナリオを作成できます。
2026年9月時点で、AI開発アシストはWebブラウザの操作が対象です。また、シナリオ作成後の動作テストや例外処理の設計は、引き続き担当者が行う必要があります。
一方で、開発の出発点をAIが支援することで、経験の浅い担当者も作業を進めやすくなります。これは、RPAを導入したくても開発スキルの問題で踏み出せなかった企業にとっても意味のある変化です。
2.直す|AIエラー修正提案
運用中のRPAは、業務システムやWebサイトの画面・仕様が変わると、これまで動いていたシナリオがエラーになることがあります。
原因調査に時間がかかれば、後続の処理にも影響が広がります。特に重要業務では、「詳しい人が戻ってくるまで止まる」という状態は避けなければなりません。
AIエラー修正提案は、エラー発生時のログを分析し、原因の候補と解決策を複数提示します。修正対象となる箇所や対応方法が示されるため、担当者は手掛かりのない状態から調査を始めるのではなく、候補を確認しながら復旧を進められます。
この機能が担うのは、エラーの自動解決ではなく、原因調査と修正判断の支援です。
「何が起きているのか分からない状態」から、原因を絞り込み、復旧へ進める状態に変える。そこに大きな価値があります。
3.広げる|生成AI処理区分
従来のRPAは、「この条件なら、この処理を行う」とあらかじめルールを定められる業務を得意としてきました。
一方、自由記述の分類や長文の要約、データの傾向分析などは、すべての条件を事前にルール化することが難しい領域です。
Ver.10では、自動化シナリオの中から生成AIを呼び出し、その結果を後続処理へ引き渡せます。
例えば、RPAがデータを取得し、生成AIが内容を分類・要約し、その結果をRPAがシステムへ登録する。こうした一連の流れを構築できるようになります。
これにより、ルール化された定型処理だけでなく、文章の意味を扱う工程も自動化の対象に加えられます。
ただし、生成AIは常に同じ結果を返すとは限らず、誤った内容を出力する可能性もあります。そのため、利用する業務の重要度やリスクに応じて、人による確認方法や例外が発生した場合の処理をあらかじめ定め、十分にテストする必要があります。
重要なのは、すべての工程をAIに任せることではありません。AIに任せる工程と、人が判断・確認する工程を明確に分けて設計することです。
4.引き継ぐ|VBScript変換アシスト
長くRPAを運用している企業では、既存の自動化シナリオにVBScriptを組み込んでいる場合があります。
新しいシナリオを作るだけでなく、こうした既存資産を、今後も保守しやすい形へ移行することも運用上の課題です。
VBScript変換アシストは、既存のVBScriptを解析し、VB.NETへの変換を支援します。元のコードを残したまま行単位で段階的に変換できるため、結果を確認しながら移行を進められます。
変換後の動作検証は必要です。しかし、すべてを一から書き直す負担を軽減し、蓄積してきた自動化資産を継承しやすくする機能です。
これからRPAを導入する企業にとっても、将来の環境変化を見据えて資産を保守できるかは、製品選定で確認しておきたい視点でしょう。
重要業務では、「作れること」と「運用し続けられること」を分けて考える
AIによってシナリオ作成が支援されると、「誰でも簡単にRPAを作れるようになる」という点に注目が集まるでしょう。これはかなり重要な進化です。
しかし、企業の重要業務をRPAで自動化する場合、「作れること」と「運用し続けられること」は分けて考える必要があります。 例えばメーカーや卸売業では、取引先のWebEDIから注文データを取得し、必要な形式に変換して基幹システムへ登録し、出荷へつなげる業務があります。

こうした処理が止まれば、担当者の作業だけでなく、その後の受注処理や出荷にも影響します。場合によっては、取引先への納品にも影響が及びます。まさに、止めることのできない業務です。
業務をRPAへ任せる際は、シナリオを作りやすいかだけでなく、次の点を含めて運用を設計する必要があります。
●画面変更などの影響を受けにくい方法でシナリオを作る
●異常を早く把握できるようにする
●エラー時の記録を残し、原因を追えるようにする
●担当者が復旧できる手順と支援体制を整える
●前後のシステムや業務を含めて、影響範囲を確認する
Autoジョブ名人には、タグ指定による画面要素の認識、スケジュール実行、エラー通知、実行画面を記録するスクリーンレコーダーなど、安定運用を支える仕組みがあります。Ver.10のAI機能は、そこへ開発と復旧の支援を加えるものです。
製品の機能だけで「絶対に止まらない」と考えるのではなく、止まりにくいシナリオを作り、異常を把握し、止まった場合も早く復旧できる運用全体で評価する必要があります。
受注から出荷までの業務を複数のシステムで連携・自動化した事例として、株式会社坂謙様の事例も紹介しています。
個人や部門の身近な作業を自動化することにも大きな価値があります。しかし、業務への影響が大きい処理では、安定稼働と復旧まで含めた運用設計がいっそう重要になります。
AI・RPA・人の役割をどう分けるか
生成AIが進化したからといって、RPAが直ちに不要になるわけではありません。
生成AIは情報の解釈や分析を担い、RPAはシステムを操作して処理を確実につなぎます。またAIは、RPAを作成・保守する人の仕事も支援します。
Autoジョブ名人 Ver.10は、この役割分担を「作る」「直す」「広げる」「引き継ぐ」の4つの機能として具体化しました。
ただし、これは自動化を魔法のように完成させるものではありません。AIが支援する範囲と、人が確認する範囲を切り分け、業務に合わせて設計することが必要です。
これから検討すべきなのは、「AIかRPAか」ではなく、業務のどこでAIを使い、どこをRPAで実行し、どこを人が確認するかです。
その役割分担を設計することが、AI時代の業務自動化を現場で機能させる鍵になると考えています。
RPA不要論から、AI時代のRPA進化論へ
RPAは、人が行っていた単純作業を代替するところから普及しました。
しかし、これからはそれだけではありません。
シナリオを作る。
エラーを直す。
対象業務を広げる。
既存資産を引き継ぐ。
そして、止めずに運用する。
AIがこうしたRPAのライフサイクル全体を支援するようになれば、RPAの役割はさらに広がります。
同時に、企業に問われることも変わります。
「どの作業をRPA化するか」だけではなく、「自社のどの業務を、AIとRPAによって再設計するのか」を考えることです。
RPAを導入したくても、開発や運用への不安から踏み出せなかった企業。
RPAを導入したものの、開発・運用・水平展開・垂直展開に課題を感じている企業。
受注から出荷までの重要業務を、止めずに自動化したい企業。
そのいずれにとっても、AIとの融合は、自動化をもう一度前へ進めるきっかけになるかもしれません。
AI時代にRPAはなくなるのか。
私は、そうは思いません。
RPAは今、AIによって次の姿へ進化し始めている。
それが、Autoジョブ名人 Ver.10を見て私が感じている、業務自動化の現在地です。
AI×RPAで、止められない業務の自動化を考える
今回取り上げたAutoジョブ名人 Ver.10のAI機能や、WebEDI受注から基幹システム連携、出荷までの業務自動化については、以下でも紹介しています。
→ Autoジョブ名人 Ver.10のニュースリリース
